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夏休み ページ30







季節はあっという間に過ぎ、つい最近入学したばかりだというのに、学校に慣れてきた頃にはもう夏休みに突入していた。
毎日ジリジリと肌を焼く太陽に、腕が健康的な小麦色になっていく。これでも、田舎にいた頃よりは野山を駆け回るような外遊びもしていないし、畑のお手伝いもしていないから例年に比べると白い方なのだが、日焼け止めを塗らないAは、クラスの中では既に黒い方だ。
縁側に面した軒下の風鈴が、チリンと風流な音を奏でて周囲の気温をほんの少し下げる。特に何をするでもなく、とぼとぼとAが歩いていると、向かい側からコネシマが見えた。

「おっ、今日も暑いなぁ。」
「はい。田舎とは違う暑さがありますね。」
「そうやろ。あっちは森も多いし、標高も高いから涼しいんちゃう?」
「その分、冬は凍えそうなくらい寒いですよ。」

コネシマは、ぱたぱたと手で顔の辺りに風を送りながら、反対の手で額に浮かんだ汗を拭った。特に一緒に何時間も過ごしたとか、何かを一緒に成し遂げたとかでもないのに、彼はスルッと距離を詰めているから不思議だ。一緒の時間が多いゾムがああだから余計にそう思うのかもしれないけれど。
一通り世間話を終えると、コネシマは少しだけ声を潜める。少しだけだから、元々声が大きいコネシマがすると普通くらいの声だった。

「どう?ゾムと仲良くできてる?」

前から言っていたことだ。仲良く。前に比べたら距離は近くなったとは思うが、それが仲良くなったということかと聞かれると、正直難しい。友達と仲良くっていうのは基本的には対等な立場で接することだと思う。でも、今それをゾムと出来ているかというと、違う気がする。むしろ、どこかで仕返しができるのなら仕返しがしたい。

「えっと、前よりは、って感じなんですけど。その、もっと仲良くしたいな〜と思ってます。」

はは、とAは恥ずかしさから引き攣ったような笑みをした。コネシマは、ぱちくりと意表を突かれたときみたいに瞬きをすると、ニッと口角を上げる。

「そうかそうか!それやったら物でもプレゼントしたら?小遣いくらいあげるで。」




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大金→←嘘



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作者名:月出里 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/home  
作成日時:2024年3月12日 22時

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