検索窓
今日:11 hit、昨日:24 hit、合計:10,794 hit

第18話:夜明け前 ページ13

*


―――コンコンッ


「Aちゃーん、入るでー」


軽いノック音の後、病室のドアが開いた。
ひょっこり顔を出した、しんぺい神はベッドで横になっているAを覗き込んだ。


『しんぺい神さん……』

「気分はどう?」

『だいぶ良いです』


そう言いながら、Aはゆっくり体を起こした。


救出からすぐに、Aと子供達は城へと戻ってきた。
城にはラウラを含め、子供達の保護者が集められていた。
涙ながらに抱き合う親子たちを見ながら、Aはホッと胸を撫で下ろした。

やっと帰ってこれた、と安心したせいか急にフッと体中の力が抜けて、Aはその場に座り込んでしまった。
慌てて駆け寄ってきたラウラとオルヴァーが、心配そうにAの体を支えた。
自分は大丈夫だから、と言っても2人は眉を下げて離れようとしない。

すると、その様子を見ていたチーノが、ラウラとオルヴァーに優しく言った。


“俺がAを医務室に連れて行くから”


そう言うと、ようやく2人は帰路についたのだ。


約束通り、チーノはAを医務室へと運んだ。
念のためにと、いくつか検査を受け結果が出るまで病室のベットを借りて、今に至るというわけだ。


『検査の結果、出たんですか?』

「せやでー」


ヒラヒラと手元の紙を振りながら、しんぺい神は言った。


「体は異常なし。特に問題はないで。……で、どうする?今夜はここに泊まってく?」

『いえ、十分休ませていただきましたし……部屋に戻ります』


ニコッと微笑みながら、Aはベットから起き上がった。









嫌に静まり返った場内を、Aはゆっくり歩く。
いつもは沢山の人が行き交っているのに、今は誰もいない。
たまにすれ違うのは、見回りの兵士ばかりで少し不思議な感覚だ。

あと少しで部屋に着く、そんなタイミングで壁にもたれ掛かる人影を見つけた。
静かに歩み寄ると、それはチーノだった。
彼だと分かった瞬間、Aの胸がトキッと鳴った。

チーノは、Aの顔を覗き込む様に腰を曲げて、首を傾げた。


「もう大丈夫なん?」

『はい。しんぺい神さんが、何ともないとおっしゃっていたので』

「そか」


すると、少しの沈黙の後、チーノはニヤッと笑った。


「な、ちょっと付き合ってくれへん?」







*

*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
175人がお気に入り
設定タグ:wrwrwd! , 我々だ! , 実況者   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:双葉ちほ | 作成日時:2021年7月3日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。