第15話:鉄格子の壁 ページ3
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『ん……』
体が痛くて、Aは目を覚ました。
ゆっくり目を開けても、辺りは薄暗く心なしか空気も冷たい。
ひとまず状況を確認しようと体を起こそうとするが……
『っ!』
グンッと体がつんのめって起き上がれない。
よくよく見てみると、両手が体の前で縛られているのことにすぐ気づいた。
試しに動かしてみるが、拘束は簡単には解けなさそうだ。
『(一体、どこなのかしら……確か、路地裏で……)』
必死に記憶を辿るが、襲われたことは覚えてる。
けれど、どうやってここまで来たかは全く分からない。
とにかく、まずは起き上がって周りを見ようと体を動かしていると……
「A、姉ちゃん……?」
どこからか、細く名前を呼ばれた。
しかし、その声にAに思わず明るい声になった。
『オルヴァー!良かった、無事なのね!』
「うん。A姉ちゃんは?」
『私も平気よ。ねえ、オルヴァー、こっちまで来れる?』
Aがそう言うと、オルヴァーは恐る恐る近寄ってきた。
彼の体には拘束されているようなところはなく、Aはホッと息をついた。
心配そうにAの顔を覗き込むオルヴァーを優しく見上げた。
『オルヴァー、私が起き上がるのを手伝ってくれない?手が縛られて、上手く動かせないの』
「うん、分かった」
ゆっくり体を起こし、やっと自分の周りを見渡すことができた。
すぐに目に入ったのは大きな鉄格子。
その先から入ってくる光だけで、この空間は照らされていた。
一面コンクリートのこの部屋が、大きな牢屋だとやっと気づいた。
『(やっぱり、あの時に……誘拐されたんだわ)』
じわっとAの額に嫌な汗が流れる。
牢の中に窓は一切なく、外の様子は全く分からない。
場所の手掛かりはおろか、今が何時なのかも知ることはできない。
カタカタと指先が震えてきた。
これから一体、どうなるんだろ。
怖い大人たちに、何かされるのだろうか。
不安と恐怖でギュッと目を閉じた。
すると……
「A姉ちゃん……」
オルヴァーが、ギュッとAの服の裾を掴んだ。
それから、今にも泣きそうな顔でAを見上げた。
「僕たち、これからどうなるの……?」
『オルヴァー……』
いけない。オルヴァーを怖がらせてしまった。
怖いのは、自分だけじゃない。
きっと目の前のこの子だって、自分と同じように震える程、不安なはずだ。
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作者名:双葉ちほ | 作成日時:2021年7月3日 22時