* ページ5
*
-----------------------
どれくらい時間が経ったのだろうか。
Aの周りに集まってきた子供達は、全員泣き疲れて眠ってしまっていた。
小さな彼らは、Aに寄り添いながらスヤスヤと寝息をたてている。
そんな彼らを、Aはじっと見つめていた。
なんだか眠れなくて、落ち着かない。
『(まるで、あの時と同じだわ……)』
祖国から逃げて、がむしゃらに走っていた時と同じ。
暗くてどこに行けばいいのか分からない不安と、身の安全が確保されていない恐怖。
限界まで追い詰められたあの時が、フラッシュバックして重なる。
けれど、1つだけ違う事がある。
今回は、独りじゃない。
守らなくてはいけない、小さな命が沢山ある。
あの時のように、倒れるわけにはいかない。
どうにかして、彼らと共にここから逃げなくては。
『(私はダメでも、この子達だけは……)』
グルグルと、Aは1人で考えを巡らせた。
ああ、今ら分かる。
エリーシャが、どんな思いで私を逃がしたのか。
きっと彼女も、傷つけたくないから自分を犠牲にして私を走らせたんだ。
無事でいてほしいから。
それだけ大切に想って、守ろうとしてくれたんだ。
あの時、どうして一緒に逃げてくれなかったのかと、不貞腐れそうになったことが無いわけじゃない。
でもそれは、自分が守られている側だったからこその考えだと、Aは気づいた。
いざ、エリーシャと同じ立場になってみれば、結局Aも彼女と同じことをするのだ。
『……私が、守からね』
小さく呟くと、Aの瞳がキラリと光った。
*
175人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:双葉ちほ | 作成日時:2021年7月3日 22時