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どれくらい時間が経ったのだろうか。
Aの周りに集まってきた子供達は、全員泣き疲れて眠ってしまっていた。
小さな彼らは、Aに寄り添いながらスヤスヤと寝息をたてている。

そんな彼らを、Aはじっと見つめていた。
なんだか眠れなくて、落ち着かない。


『(まるで、あの時と同じだわ……)』


祖国から逃げて、がむしゃらに走っていた時と同じ。
暗くてどこに行けばいいのか分からない不安と、身の安全が確保されていない恐怖。
限界まで追い詰められたあの時が、フラッシュバックして重なる。

けれど、1つだけ違う事がある。
今回は、独りじゃない。
守らなくてはいけない、小さな命が沢山ある。

あの時のように、倒れるわけにはいかない。
どうにかして、彼らと共にここから逃げなくては。


『(私はダメでも、この子達だけは……)』


グルグルと、Aは1人で考えを巡らせた。

ああ、今ら分かる。
エリーシャが、どんな思いで私を逃がしたのか。
きっと彼女も、傷つけたくないから自分を犠牲にして私を走らせたんだ。

無事でいてほしいから。
それだけ大切に想って、守ろうとしてくれたんだ。

あの時、どうして一緒に逃げてくれなかったのかと、不貞腐れそうになったことが無いわけじゃない。
でもそれは、自分が守られている側だったからこその考えだと、Aは気づいた。
いざ、エリーシャと同じ立場になってみれば、結局Aも彼女と同じことをするのだ。


『……私が、守からね』


小さく呟くと、Aの瞳がキラリと光った。







*

第16話:守りたいもの→←*



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作品ジャンル:恋愛
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作者名:双葉ちほ | 作成日時:2021年7月3日 22時

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